foreword

十二の問いかけ  

谷川 俊太郎

どうしてコトバが欲しいのだろう?
柔らかな布の手触りだけで十分なのに

どうして服を着るのだろう?
誰もがvaginaかpenisを持っているのに

どうして色を塗るのだろう?
花々と小鳥に任せておけばいいのに

どうして形を創るのだろう?
自然は形の宝庫なのに

どうして文字を書くのだろう?
声がこんなに暖かいのに

どうして箱が要るのだろう?
見えないものは入れられないのに

どうしてなんでも飾るのだろう?
はじめはみんな生のままなのに

どうして平和が戦争を生むのだろう?
戦争は平和を生みはしないのに

どうして入道雲が湧くのだろう?
凍える冬の心の底から

どうして道しるべがあるのだろう?
迷わずに行くのは退屈なのに

どうして名前をつけるのだろう?
これそれどれあれ 大きな違いなどないのに

どうしてどうしてと問うのだろう?
世界は答であふれているのに